梅雨の気配を感じるころから、小梅、青梅、完熟梅と時期を少しずつ変えて店頭に並び始めるコロコロと可愛らしい梅の実。
「今年こそ梅仕事をやってみたいけれど、何から始めたらいいかわからない」
「なんだか大変そう」「食べ切れるか不安」…
そんな方に向けて、初めてでも、忙しくても、少量で気軽に楽しめる梅仕事の基本をまとめました。
私自身、毎年欠かさず行っている梅仕事。
少しの手間をかけるだけで、一年中、食卓に彩りと美味しい味わいを届けてくれます。
ぜひ今年は梅仕事、楽しんでいただけたらうれしいです!
梅の基本:種類と選び方
梅仕事をする際に、覚えておきたいのが、梅の種類。
作りたいものに合わせて、梅を選びましょう。
梅の種類と適した梅仕事
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梅の種類 |
出回り時期 |
特徴 |
おすすめの梅仕事 |
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小梅 |
5月中旬〜下旬 |
直径2〜3cmほどの小さな梅。お弁当にぴったりのサイズ感。 |
カリカリ梅 |
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青梅 |
5月下旬〜6月上旬 |
果肉が硬く酸味が強い未熟な梅。エキス(果汁)を抽出する仕込みに最適。 |
梅シロップ、梅酒、はちみつ漬け、甘露煮、ピクルス |
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完熟梅・黄梅 |
6月中旬〜下旬 |
黄色く色づき、甘い芳香が漂う熟した梅。果肉を楽しむ仕込みに最適。 |
梅干し、梅ジャム、はちみつ漬け、梅みりんネクター |
※梅の出回り時期は、地域によって多少異なります。
準備しておきたい基本の道具
- 保存瓶: 煮沸消毒またはアルコール消毒ができるガラス製がおすすめ。(おすすめの保存瓶はこちら)
- 竹串または爪楊枝: 梅のヘタを傷つけずに取り除くために使用します。
- 清潔な布巾(またはペーパータオル): 水気をしっかり拭き取ることがカビ対策のためのポイントです。
青梅で作るおすすめの梅仕事【6選】
果汁をたっぷり抽出したり、爽やかな酸味を生かしたり。青梅の時期だからこそ楽しめるレシピです。
1. はちみつの黒酢梅シロップ
黒酢とはちみつを使った、元気のでる梅シロップの作り方です。暑さが続く日、ちょっと疲れたときにおすすめです。炭酸水で割ってぐいっと飲むと元気がでてきます◎
2. 青梅のはちみつ漬け
3日で完成する青梅のはちみつ漬け。私の梅仕事の中でも大人気のレシピです。カリカリとした青梅の果肉を楽しめます。はちみつと塩でつけるので、甘じょっぱくて、やみつきに!暑い時期の箸休めに最適です。つけ汁は梅ジュースとして飲めて、余った梅の実はめんつゆにできる、一石三鳥の梅仕事です。
3.梅の甘露煮
青梅を使った、梅の甘露煮の作り方です。なるべく簡単に作る方法を考えました。さっぱりとした甘さが絶品!
今だけの贅沢な味わい、ぜひ梅の季節のデザートを楽しんで。
4. ちょこっとさっぱり梅酒
「梅酒は仕込むのが大変そう」「大きな瓶を置く場所がない」という方にぜひ試してほしい、少量でちょこっと仕込める梅酒です。少量で試せるので、初めての梅酒づくりにもおすすめです。
5. 梅ピクルス
パリパリの食感と爽やかな酸味が魅力の、ちょっと変わり種の梅仕事。そのまま食べたり、カレーに添えたり、サンドイッチに加えたり、刻んでカルパッチョにのせても美味しく楽しめます。
▶︎ 梅ピクルスの詳細レシピはこちら
6. 実山椒入り梅シロップ
実山椒を加えて爽やかに仕上げる、ちょっと大人味の梅シロップのレシピです。炭酸割りで飲むと、ピリッとした実山椒の風味と梅の酸味が見事に調和し、夏バテ予防にもぴったり。
小梅で作るおすすめの梅仕事
コロコロとした可愛らしい小梅。お弁当のすき間や、ちょっとした箸休めに大活躍してくれます。
カリカリ梅
お弁当に入れるとそのまま食べられる便利さと、カリッ!とした小気味よい食感がたまらない小梅仕事です。普通の梅干しと違い、「塩漬けした後に干さない」ので手軽です。そして卵の殻のカルシウムを加えることが、カリカリに仕上げる最大のポイントです。
完熟梅で作るおすすめの梅仕事【5選】
部屋中に甘い香りが漂う完熟梅。梅本来の旨みや果肉の柔らかさを生かした手仕事です。
1. 梅干し(赤紫蘇梅干し)
鮮やかな赤色と赤紫蘇の香りをまとった、おなじみの梅干し。日本人なら一度は手作りしてみたい、夏の手仕事の代表格です。難しそうと思われがちですが、「ジッパー袋」で手軽に、失敗しづらく作れます!赤しそが出回る時期に、完熟梅と合わせてスーパーや八百屋をチェックしておきましょう。
▶︎ 赤紫蘇梅干しの詳細レシピはこちら
2. 梅干し(白干し梅)
赤紫蘇を使わず、塩だけで漬け込む伝統的な梅干し。驚くほどシンプルで簡単です。梅本来のフルーティーな香りと味わいがダイレクトに楽しめます。一緒に出る「白梅酢」も、料理に幅広く使えるとっておきの調味料に。
3. すっぱい梅ジャム
はちみつを使って砂糖なしで作れる、甘すぎない梅ジャムのレシピ。少し傷んでしまった梅や、熟しすぎた梅の救済にもぴったりなです。甘すぎない、芳醇な香りのジャムはトーストやヨーグルトにたっぷりかけても美味しいです。お菓子作りにも。
4. 完熟梅のはちみつ漬け
青梅で作るはちみつ漬けとは、まったくの別物!完熟梅で作ると、とろりと濃厚で、桃のような甘い香りが口いっぱいに広がります。シロップは炭酸で割ったり、梅の実はそのままデザート感覚で食べられます。

5. ちょこっと完熟梅酒
梅酒、おいしいけれどたくさん作ると余ってしまって、何年も置いてあるということもよくありますよね。ということで、少量で仕込む「少量はちみつ梅酒」のご紹介です。完熟梅とはちみつを使ってまろやかな梅酒に仕上がります。
▶︎ ちょこっと完熟梅酒の詳細レシピはこちら
梅干しの名脇役!赤紫蘇の仕込み
赤紫蘇は梅干しの色付け用と思われがちですが、香りがよく、赤紫蘇だけでも美味しいシロップが出来上がります。
赤紫蘇ジュース(赤紫蘇シロップ)
赤紫蘇の葉をたっぷりのお湯で煮出し、酢を加えると、パッと鮮やかな赤紫色のドリンクに。まろやかな酸味が特徴のりんご酢や私が出している「tsumugi-te- 黒酢もろみのにごり酢」で作るのもおすすめです。夏バテ予防にもぴったりの一杯です。
梅酢の使い方|梅仕事のもう一つのご褒美
梅干しを仕込むと、副産物として手に入るのが「梅酢」。梅干しを塩漬けした際にでる梅のエキスのことです。
実はこれ、梅仕事のもうひとつのご褒美と言っていいくらい、毎日の料理に大活躍してくれる万能調味料なんです。捨ててしまうのは本当にもったいない!ここでは梅酢の種類と、わが家の定番の使い方をご紹介します。
白梅酢と赤梅酢の違い
- 白梅酢: 白干し梅を仕込んだ時に上がる透明な梅酢。クセが少なく、梅の香りと塩気が爽やかなので、料理全般に使いやすい万能調味料です。
- 赤梅酢: 赤紫蘇梅干しを仕込み、赤しそを加えた後の鮮やかな赤色の梅酢。色付けと香りづけを兼ねた、彩りに使える調味料です。
梅酢のおすすめの使い方
梅酢のおすすめの使い方をご紹介します。色づけをする紅生姜やしば漬け以外は、白梅酢、赤梅酢どちらでも構いません。
- すし酢の代わりに: ご飯に混ぜるだけで、ほんのり梅の香りが立つ夏向きのちらし寿司や手まり寿司に。
- ドレッシングに: オリーブオイルと梅酢を合わせるだけで、爽やかな和風ドレッシングに。
- 紅生姜: 千切りにした新生姜を赤梅酢に漬けるだけ。香り豊かな手作り紅生姜が完成します。
- しば漬け風: きゅうり、なす、みょうがを梅酢で漬け込めば、鮮やかな夏の常備菜に。
- おにぎりに: ご飯を握る時に手につけると、防腐効果と爽やかな塩味が一石二鳥。
- きゅうりの梅酢漬けに:冷凍したきゅうりを梅酢とみりんでつけるだけで、箸休めにぴったりの一品に。
保存のコツ
梅酢は塩分が高いため、清潔な瓶に入れて冷暗所または冷蔵庫で1年以上保存できます。料理に使う際は、必ず清潔なスプーンで取り分けるようにしてくださいね。
失敗しないために!梅仕事の保存とトラブル対処法
梅仕事で最もよくいただく質問が「カビが生えてしまった」「なんだか発酵している気がする」というもの。以下の見分け方を頭に入れておけば、いざという時も冷静に対処できます。
カビ・発酵の見分け方と対処法
- 梅干しの塩漬けの際に、白いものが… →【白カビ、もしくは、塩の塊】です。
見分け方は【白い部分がフワフワしているか】どうかです。カビは菌糸があるため、フワフワとしています。一方で塩の場合はフワフワとはしていません。塩であればそのまま、塩が溶けるように揉めばOKですが、カビの場合、対処が必要です。
全体にカビが広がってしまっていたら残念ながら処分した方がよいですが、一部であれば、対処することが可能です。
カビの対処方法は、まず、梅と梅酢にわけます。梅は食品用アルコールで丁寧に拭き取ります。
梅酢は、カビの部分を取り除き、一度煮沸し、冷まし、
新しいジッパー付きの袋に、梅と共に戻します。 - 梅シロップからブクブクと泡が出ている → 【発酵】です。
梅シロップは糖分によって発酵することがあります。発酵すると、甘みが少なくなってしまいます。
私のレシピは梅を冷凍してから作るため発酵することは少ないのですが、もし発酵してしまったら、梅からエキスがしっかりでたあとであれば対処することは可能です。梅は取り除き、一度煮沸して冷ましてから冷蔵庫に入れます。
【薬膳コラム】梅の効能と夏の体づくり
国際中医薬膳師の視点から、梅の持つパワーをもう一つお伝えさせてください。
中医学(東洋医学)において、梅は体にこもった熱を冷ましたり、汗のかきすぎを防ぎ、体に潤いを与える効果があります。
また、疲労回復効果もあるので、
夏の暑さが厳しい時期に、疲れをとり、体をととのえるのにぴったりの食材なのです。
また、胃腸の調子をととのえるので、お腹を壊しやすい人にもおすすめです。
とくに梅干しは、夏バテ予防に最適です。塩分とクエン酸の組み合わせは、熱中症対策としても効果的です。
毎日の食卓に、梅干しを一つ添えることで、暑い夏を健やかに乗り切る助けになってくれます。
梅仕事のよくある質問(FAQ)
- 青梅と完熟梅はどう使い分ければいいですか?
A.シロップや梅酒は青梅でも完熟梅でも作ることができますが、味わいが異なります。青梅は果肉が硬く酸味が強いため、シすっきりとした仕上がりに、一方で完熟梅は香りが強くフルーティーなので、まろやかに香り高く仕上がります。
また、甘露煮は果肉が硬い青梅が向いていますし、梅干しは果肉が柔らかい完熟梅が向いています。
仕上げたい味わいや作りたいものに合わせて梅を選んでみてくださいね。 - 梅干しは塩分何%で作るのが正解ですか?
A. 保存性と味のバランスで私は「13%」を基本としています。これ以上塩分が低いとカビが生えやすくなってしまうので、これ以上塩分を下げるのはおすすめしません。 - 保存瓶や重石など、梅仕事の道具はどこで買えますか?
A. 保存瓶は「セラーメイト」や「野田琺瑯」の製品が使いやすく、Amazonや楽天などのネットショップで一年中購入できます。重石はペットボトルを使うと便利です。500mlのペットボトルなら500gの重石になります。
梅仕事をもっと楽しむために(書籍のご案内)
梅仕事についてもっと深くたくさん知りたい、梅仕事でできた保存食を使った料理レシピを知りたいという方には、私の著書もぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。
また、毎年梅仕事の時期には、YouTubeチャンネル「榎本美沙の季節料理」でも仕込みの様子を動画でご紹介しています。テキストだけでなく、実際の手の動きや梅の様子を映像で見るとイメージが湧きやすいので、仕込みの前にぜひご覧になってみてくださいね。
まとめ|一年の保存食が始まる、6月の手仕事
梅が出回る時期はバタバタとしますが、梅仕事はその時期だけの楽しみ。
季節を感じられる梅仕事は、毎年季節を感じる豊かな時間になってくれます。
梅仕事は思われる以上に簡単なものが多いですが、「なんだか難しそう」とハードルを感じているはじめての方は、まずは梅シロップや白干し梅など、気軽な仕事から始めてみてください。瓶の中で、少しずつ梅のエキスが上がってくる様子を毎日眺めるのは、本当に愛おしく、心満たされる時間です。
ぜひ梅仕事を気軽に楽しんでいただけたら嬉しいです。
榎本美沙
料理家 / 発酵マイスター / 国際中医薬膳師
発酵食品、旬野菜を使ったシンプルなレシピが好評で、雑誌、テレビなどで活動中。『榎本美沙のみそ本』(主婦の生活社)など著書多数。



